リパワリングとメンテナンスの違いとは？リパワリングを実施した事例
リパワリングとメンテナンスは、太陽光発電システムの効率的運用において重要です。リパワリングは、システム性能向上のために機器をアップグレード・交換し、特に運転開始から10年経過後のパワーコンディショナ交換が求められます。
メンテナンスは、定期的な点検を行い、機器の正常な動作を維持して寿命を延ばすことを目的とします。両者は発電効率向上や故障リスク低減に寄与し、適切な管理が法律で求められています。
目次
リパワリングとメンテナンスの違い
リパワリングはシステムの性能を向上させるための機器の交換やアップグレードを指し、メンテナンスは機器の正常な動作を保ち寿命を延ばすための定期的な点検作業です。太陽光発電システムを長期間、効率的に運用するためには、リパワリングとメンテナンスの両方が重要です。
◇リパワリングとは？
リパワリングとは、太陽光発電システムの性能を向上させるために、機器のアップグレードや交換を行うことを指します。太陽光パネルは使用年数が経つとどうしても発電量が低下してしまいますが、リパワリングを実施することで、システム全体の効率を改善し、発電量の減少を抑えることが可能です。
特に、運転開始から約10年経過すると、パワーコンディショナの保証期間が切れるため、リパワリングの需要が高まる傾向にあります。この時期にリパワリングを行うことで、太陽光発電システムの性能を維持し、長期的な電力供給を安定させるために大きな効果をもたらします。
◇メンテナンスとは？
メンテナンスとは、システムや機器の寿命を延ばし、正常な動作を維持するために定期的に行われる保守作業や点検活動のことです。
太陽光発電システムでは、太陽光パネルやパワーコンディショナといった精密機器が屋外に設置されているため、風雨や汚れによる劣化を防ぐためにも定期的なメンテナンスが欠かせません。これにより、発電効率の低下を防ぎ、故障のリスクを減らすことができます。
また、改正されたFIT法により、太陽光発電システムのメンテナンスは義務化されており、適切な管理が法律で求められています。
リパワリングを実施する方法とは？
リパワリングは、太陽光発電システムの性能を向上させ、発電効率を最大限に保つために行われる重要な工程です。
埼玉県内でも多くの事業者がこの工程を取り入れており、機器のアップグレードや新技術の導入を通じて、システム全体の発電量を改善し、長期的な安定稼働を実現しています。
◇パワーコンディショナの交換
パワーコンディショナ（PCS）は、太陽光パネルで発電された直流電流を家庭や企業で利用できる交流電流に変換する非常に重要な機器です。しかし、PCSは長期間使用するとその性能が徐々に低下し、発電効率に影響を与えることがあります。
そこで、定期的にPCSを交換することで、電力変換の効率を向上させ、発電量の増加が期待できるのです。近年の技術進歩により、新しいPCSは従来のものよりも高性能になっており、太陽光発電システム全体の発電効率をさらに高められます。
◇オプティマイザの導入
オプティマイザの導入は、発電システムの効率化を図る上で非常に有効な手段です。この装置は、各太陽光パネルの電圧をリアルタイムで調整し、発電効率を最大限に引き出します。
常に各パネルの発電状況を監視し、電流の変動に合わせて最適な電圧を自動的に調整することで、影やパネルの劣化による発電量の低下を防ぐことが可能です。
システム全体の効率を維持し、リパワリングとして太陽光発電システムの長期的なパフォーマンス向上に大きく貢献します。
リパワリングの流れとは？
リパワリングは、太陽光発電システムの性能を向上させ、発電効率を長期的に維持するための重要なプロセスです。設備の状態確認から機器の選定、工事、そしてメンテナンス計画まで、段階的に進めることで、システム全体の効率を最大限に引き出し、長期的な安定稼働を実現します。
◇1.設備の状態をチェックする
最初のステップは、専門業者に依頼して太陽光発電システム全体の状態を詳しくチェックすることです。
具体的には、設備の発電効率、設置されている土地の環境、関連法令の順守状況、さらにはストリングや資料の保管状況まで幅広く調査することが可能です。この調査を通じて、太陽光発電システムが経年によってどの程度劣化しているか、またどの部分の改善が必要か明確になります。
特に発電効率が著しく低下している場合には、リパワリングの必要性が高まるため、調査結果は重要な判断材料となります。
◇2.リパワリングする機器を選ぶ
調査結果に基づき、リパワリングに必要な機器を選ぶ際は、既存の機器との互換性をしっかり確認することが重要です。
特に、同じメーカーの後継機種を選ぶことで、互換性の問題を最小限に抑えられます。太陽光パネルにおいては、同じ規格であっても製造時期により厚さが数ミリ異なる場合があり、そのためパネルに適合する留め金具や架台の準備が欠かせません。
こうした細かい点までしっかりと対応していないと、工事の進行に支障が出る可能性があるため、機器選定の際は十分な注意が必要です。適切な機器の選定を行うことで、リパワリングの効果を最大限に引き出し、発電システムの効率を高めることが期待されます。
◇3.施工
リパワリング工事を進める際は、まず交換する機器が決まった後、天候に十分注意して工事を行うことが重要です。
特に、雨や雪が降ると感電のリスクが高まるため、晴れた日を選んで専門業者に依頼するようにしましょう。梅雨のように天候が不安定な時期には、工事期間に余裕をもって計画することが大切です。
また、太陽光発電の機器交換は電気系統に関連するため、施工時には安全対策を徹底することが求められます。機器の交換が終わったら、通電して正常に発電できているかを確認し、問題がなければリパワリング工事は無事完了となります。
◇4.メンテナンス計画を立てる
リパワリング工事が完了した後は、新しい機器によって発電効率が向上しているため、その効果を長く維持するためにも、定期的なメンテナンスが不可欠です。
リパワリングを行わなかった古い機器は寿命が近づいている可能性が高く、より丁寧な点検や保守が求められます。新しい機器の性能を最大限に活かしつつ、古い機器も適切にケアすることで、太陽光発電システム全体のパフォーマンスを長期的に安定させることが可能です。
計画的なメンテナンスを行うことで、システムの効率を高め、寿命を延ばすことが期待されます。
リパワリングを実施した事例を紹介
画像出典：ソーラージャーナル
リパワリングを実施することで、太陽光発電システムの性能を大幅に向上させることが可能です。ある企業が実際にリパワリングを行い、発電量の向上やオンラインでの出力制御対応による効率化を実現した事例があります。
◇リパワリングを実施するに至った背景
ある企業がリパワリングを実施するに至った背景には、パワーコンディショナの耐用年数が近づいていたことがありました。物流センターに設置された太陽光発電設備のパワーコンディショナが10年目を迎え、FIT契約の残り期間を踏まえて交換を検討しました。
複数社の見積もりを比較した結果、売電量の増加が期待できるうえ、施工期間が短いという理由からリパワリングを決定したのです。
◇リパワリングの効果
リパワリングの効果として、オンラインでの出力制御対応が可能になり、人的な手間を大幅に削減できました。以前は土日などに出力制御がかかると、手動で制御し復旧させる必要がありましたが、オンライン化により作業時間が数時間に短縮され、対応漏れの心配もなくなりました。
また、ソーラーエッジシステムの導入により、パネルごとの発電状況をリアルタイムでモニタリングできるようになり、メンテナンスが効率化されています。さらに、発電量の向上も実感しており、今後の更なる改善が期待されています。
リパワリングとメンテナンスは、太陽光発電システムの効率的運用において重要な役割を果たします。リパワリングは、システム性能向上のために機器をアップグレード・交換することで、特に運転開始から10年経過後のパワーコンディショナの交換が求められます。一方、メンテナンスは定期的な点検作業を指し、機器の正常な動作を維持し寿命を延ばすことを目的とします。これらの作業は、発電効率の向上や故障リスクの低減に寄与し、FIT法に基づき適切な管理が法律で求められています。
リパワリングのプロセスは、まず設備の状態チェックから始まり、機器選定、施工、メンテナンス計画の立案へと進みます。具体的には、発電効率を調査し、互換性のある機器を選定し、安全に施工を行った後、定期的なメンテナンスを行うことで、システム全体の効率と安定性を確保します。
このように、リパワリングとメンテナンスを適切に実施することで、太陽光発電システムの長期的な性能向上が期待できます。
